英国滞在7日目。グラスゴー美術学校へ向かう。知ってはいたけどショックだった。全体に白いカバーがかかっている。2014年と2018年に火災に会い、特に2回目の火災は、あと1年で修復が終わるという時に起こったらしい。この度は壊滅的で、やるとしたらほぼ新築に近い修復になるようだ。1回目の火災の後、ブラッド・ピットも含め、世界中から十分な寄付が集まったという。その時に、なぜ徹底的な防火対策を最初にやらなかったのだろうか、それが不思議で、残念だと思う。
向いに見える青緑色の建築は、2009年に行われたコンペで、スティーブン・ホールが勝利して建てられた増築棟、グラスゴー美術学校セオナ・リード・ビルだ。
マッキントッシュの建築が存在して初めて、スティーブン・ホールの増築棟も対比的に生きてくるように思うのだが、マッキントッシュの本棟が今はなく、カバーで囲まれていては、スティーブン・ホール棟も少々精彩を欠いていて、ヘルシンキの現代美術館「キアズマ」を初めて見たときみたいに感じた感動はなく、見てまわる気分になれなかった。スティーブン・ホールは元来とても好きな建築家なのだが。
マッキントッシュの本棟の模型が1階に展示してあった。寄付が集まって何年か先に建てる事が出来たとしても、残念ながら、おそらくはオリジナルのものとは違うものになってしまうのではないか。
美術学校の模型の近くには、マッキントッシュがマクドナルドと結婚した時に住もうと計画した住宅の計画案が展示してあった。ヒル・ハウスのファサードを思わせる魅力的な表情をしている。
仕方なく、バスに乗って、グラスゴー大学のハンタリアン・ミュージアムへ行った。マッキントッシュが途中住んでいた家の内部が再現されている。生活感のない不思議な空間。あまり魅力が感じられない、何故だろう。マッキントッシュの空間はマッキントッシュの家具を揃えて並べれば、出来上がるわけではないだろう。マッキントッシュの家具の展示室としてであれば問題ないが。
また1919年頃にデザインされた「ダーンゲート78番」(バセット・ローク邸)の3階のゲスト用の寝室が再現されていた。今までの正方形、格子のパターンに新しくストライプのパターンが加わった。ほぼストライプのみでベッド、壁から天井までが構成されている。
この後1920年代から30年代にかけて一世を風靡したアール・デコに近い気分が感じられる。グラスゴーをはなれた後の作品で、このころマッキントッシュはまだ50歳前後、この後60歳で亡くなるまでの10年間は建築から離れてしまっている。